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メインゲストにアート思考キュレーター若宮和男さんを迎え(zoom参加)、会場にはアートディレクターでありデザイン会社「オノコボデザイン合同会社」代表の小野信介さん、アーティストで保育士のいぬどうあいさんに登壇してもらいました。
司会は「エンコミュニティラボ」代表の山中はるなさんと「ハウリング」代表の原田いくみさんです。
今回の主役である子ども達は6歳から12歳の総勢8名。ギャラリーは子ども達の家族たち。ボランティアは学生含め7人に運営・撮影スタッフ10名以上と、にぎやかな会場となりました。
「ねえねえ、いくみん、アート思考ってなあに?」と山中さんの問いかけから始まったイベント。まずは原田さんから趣旨説明がなされました。
「アート思考とは、じぶんはどう思うのか、なぜそう思うのかを大切にする自由な考え方です。今まで『あたりまえ』に思っていたモノも、いろいろな角度から観察したり、見えないところも想像することで、じぶんだけの考え方が生まれます」
そこから大画面に映し出された絵画にタイトルをつけるワークショップがはじまりましたが、子どもたちの筆はなかなか進みません。悩みながら子どもたちが考えたタイトルは、「にじ」「こいのぼり」「へんてこなさかな」「ふくをきているあおうま」「カラフルなさかな」「あそんでいるねこ」「はねがついているねこ」「めがいっぱいあるさかな」とどれもユニークなものでした。
子どもたちの意見が出つくしたあと、アート思考キュレーターの若宮さんはこう話します。
「これは外国の画家であるカンディンスキーという人が描いた絵で、『無題』というタイトルです。タイトルがなかったんです」
子どもたちはおそらく初めて絵のタイトルを考えるという体験をしたのではないでしょうか。「むずかしい」と悩みつつも、それぞれが考え出したタイトルはそれぞれ異なり、それを聞くことで、「それでいいんだ」「正解はないんだ」と気づいていたように思います。
子どもたちの好きなものについて深掘りしていくワークショップです。子どもたち1人に対して大人が「どんなものが好き?」「それはなぜな?」と尋ねていきます。
私は7歳のここみさんの好きなものについてたずねます。
「学校から帰ったらまず何をする?」という私の質問に、「うーん……」と困っていたここみさんでしたが「好きなものは何?」とストレートに尋ねると、「おかしづくり!」と即答してくれました。
私:どんなものをつくるの?
ここみさん:あめだま
私:あめだまをつくるときのどんなところが好き?
ここみさん:ぼうをさすとき
私:へえ~!棒をさすときがいちばん好きなんだね。それはどうして?
ここみさん:もうすぐできあがるってわくわくするから
なるほど、もうすぐ完成して食べられると思うとワクワクするから棒をさすのが好きなんですね。他にもチョコレートやクッキーを作ったことがあると話してくれました。
つづいて、大人と一緒に大好きなものについて深掘りした子どもたちに、みんなの前に出て発表してもらいました。ほとんどの子どもたちが恥ずかしそうに、しかし立派に発表することができました。
その中で、あるお子さんは緊張のせいかお手洗いに行きたくなってしまい、「トイレに行きたい」と。司会の原田さんは「いいよいいよ、行っておいで!何よりも大事!」と送り出していました。
みんなの前でしっかり意思表示できるのもすばらしいことですね。
休憩をはさんで、子どもたちにはまちの公共施設のカードを引いてもらいました。これをさっき考えた「大好きなもの」と掛け合わせて、新しい公共施設のアイデアを考えてもらうのです。
猫 × 警察署
ワンピース × 病院
竜(将棋の駒) × 駅
みかん × 消防署
かりかり梅 × スーパー
鬼滅の刃 × 学校
お菓子 × トイレ
遊具 × 図書館
という組み合わせができあがりました。お菓子×トイレを選んだここみさんは「壁にお菓子がたくさんあるトイレ」を考えていました。ピンク色の壁に、チョコレートやクッキー、あめ玉などがたくさんあり、ケーキの匂いがするそうです。水を流すと楽しい音楽が流れるのだと話してくれました。
考える時間が終わったら、テーブルいっぱに敷きつめられた透明ビニールに、さきほどの施設を描いていきます。
画材はカラフルなカラーフィルムとポスターカラーペンです。
筆を持つと、どの子ども数分でイキイキとするから不思議です。最初は遠慮がちに描き始めていたのに、すぐに没頭。想像の翼が広がっていきます。
描きながら、「そうだ、ここもブランコにしよう!」とか「全部ふわふわなの」と、どんどんアイデアが浮かんでくるようでした。
竜(将棋の駒)×駅を選んだけんごさんをサポートするアートディレクターの小野さんも、「子どもの感性は面白いね」と同じ目線で創作を楽しんでいます。
描く子どもはもちろん、見守る大人も楽しそうです。
思考の時間でうまれたアイデアを、手を動かしながら煮詰めていくようでした。
子どもたちは順番につくったものを発表します。
ただでさえ面白い施設が、絵になりさらに面白みが増しました。太陽の陽射しがすけるキャンパスの絵を前に、子どもが街のあたらしい施設を説明します。
ふわふわした警察署
海賊船の病院
竜の鱗がかっこいい駅
みかんジュースが出る消防車
カリカリ梅がコロンと転がるスーパー
鬼滅の学校
壁いっぱいにお菓子がある甘い香りのトイレ
ブランコにのって本を読める図書館
自由で楽しい街になりました。
※写真はカリカリ梅をたくさん作るそんちゃんとさーちゃん。
大人たちからコメントをもらいました。
若宮さん:普段、自分が好きなものをみんなの前で言う機会はあまりないと思います。その機会が増えたらもっと楽しくなるのではと感じました。自分が暮らしているまちに大好きなものを足すと、まちのことも好きになれると思います。自分の好きを大切にしてください。
いぬどうさん:初めて会う人と一緒にものを作ったり、前に出て話したりして、みんな緊張したと思います。『自由に作っていい』と言われるとむずかしかったかもしれませんが、きっといい経験になったのではないでしょうか。これからも楽しんでアートに触れてもらいたいです。
小野さん:久しぶりに小学生や幼児さんと一緒に絵を描いて楽しかったです。施設と好きなものを掛け合わせるという発想は新鮮でした。デザインでもまったく関係ないものを組み合わせるという考え方をするので、覚えておいてもらえたら役に立つかもしれません。
イベント終了後、何人かの子どもたちに感想を聞きました。
今回イベント最年少だった6歳のけんごくんは「楽しかった。作るときに金色と銀色と銅の折り紙がほしかったけど、なかったので緑と青を代わりに使った」とお話してくれました。
7歳のいとねさんは「おえかきが楽しかった。みんなの前で発表したのが緊張したけど、またやりたい」
12歳で今イベント最年長だったそんちゃんは「好きなものと施設の組み合わせを考えたり、絵のタイトルを考えたりするのは初めてやったので、むずかしかった」と話してくれました。
それぞれの子どもたちが思い思いの絵を描き、それぞれの体験をした今回のイベントでしたが、持ち帰ってくれた感想もさまざまだったことでしょう。このイベントを今後も繰り返し行うことで、子どもたちが「正解はひとつじゃないんだ」「自分とは違う意見の人がいて、だからおもしろいんだ」「自分の意見が人と違っても堂々としていていいんだ」と学んでくれたら、そしてありのままの自分に自信を持ち、自分を好きになり、他者を認める社会をつくっていってもらえたらうれしいです。